2010年
肺炎球菌細胞壁抗原(定性)(準用先区分D012-23)(区分E-3)
平成22年12月1日より適用
保険点数:210点
判 断 料:144点
製 品 名:ラピラン 肺炎球菌
検査目的:喀痰又は上咽頭ぬぐい中の肺炎球菌抗原の検出
製造販売元:大塚製薬(株) TEL 0120-189-840
測 定 法:イムノクロマト法 定性検査
包装単位:10テスト/1キット
結果が出るまでの時間:25分 自動化:不可
検 体:喀痰又は上咽頭ぬぐい
感度試験・正確性試験:陰性管理試料を測定するとき、陰性と判定される。弱陽性管理試料及び陽性管理試料を測定するとき、陽性と判定される。
同時再現性試験:陰性管理試料を4回測定するとき、すべて陰性と判定される。弱陽性管理試料及び陽性管理試料をそれぞれ4回測定するとき、すべて陽性と判定される。
検出感度:肺炎球菌C-ps抗原濃度 0.75ng/mL抽出液(Streptococcus pneumoniae ATCC49619株 濃度 1.7×104 CFU/mL抽出液相当)
【特徴】 肺炎や下気道感染症において肺炎球菌は感染率の高い原因菌である。肺炎球菌はグラム陽性の双球菌であり、菌体の表面は細胞壁とその外側に位置する莢膜で覆われている。莢膜は、多様な構造を有する莢膜抗原から構成されており、莢膜による血清型は現在90種類に分類されているが、本検査方法は、すべての肺炎球菌に共通の細胞壁抗原(C-ps抗原)を特異的に検出するため血清型の影響を受けない。また、現在、肺炎球菌を検出する迅速で簡便な検査として、既承認品の尿中抗原検出キットがあるが、下気道感染症や肺炎などの患者が多い小児、乳幼児においては測定試料となる尿の採取が困難である。更に、初期感染では陰性となる点、小児では偽陽性が少なくない点、治癒後でも1~2ヵ月ほど肺炎球菌抗原が検出されるとの報告もあり、現在の感染により検出されたものなのか、以前の感染によるものなのか、判断がつかないことがあるが、本検査法は局所の検体を用いるため、感染時期の影響を受けず現状の菌の状態を反映するため、より的確な初期治療抗菌薬の選択が出来る。
本検査法は、イムノクロマト法により特別な機器を必要とせず、試料採取から約25分で判定結果を得ることが出来る。
肺炎及び下気道感染症症例における培養法を基準とした本キットの感度は78.0%(92/118)、特異度は95.0%(227/239)であった。このうち、喀痰を検体とした場合は、感度88.1%(59/67)、特異度は93.3%(167/179)であり、上咽頭ぬぐいを検体とした場合は、感度64.7%(33/51)、特異度100%(66/60)であった。喀痰の採取が困難な小児では上咽頭ぬぐいを使用できる利点があるが、感度に注意を要する。
【保険請求上の注意】
ア 肺炎球菌細胞壁抗原(定性)は、「23」の尿中肺炎球菌莢膜抗原に準じて算定する。
イ 喀痰又は上咽頭ぬぐいを検体として、イムノクロマト法により、肺炎又は下気道感染症の診断に用いた場合に算定する。
ウ 尿中肺炎球菌莢膜抗原と併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する。
インタクトⅠ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(Intact PⅠNP)(準用区分先:D008「14」)(区分E-3: 新項目 測定項目が新しい品目)
平成22年6月1日より適用 内分泌学的検査
保険点数:170点
判 断 料:D026 4 生化学的検査(Ⅱ)判断料144点(月1回に限る)
製 品 名:プロコラーゲン Intact PⅠNP
検査目的:血清中のインタクトⅠ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(Intact PⅠNP)
製造販売元:(株)テイエフビー TEL 03-3559-2309
製 造 元:オリオンダイアグノスティカ社
測 定 法:放射性免疫測定法(RIA) 定量検査
包装単位:100テスト/1キット(検量線作成用として二重測定で14テスト分、標準コントロール用として二重測定で4テストを用い、最大で82検体)
結果が出るまでの時間:約3時間 自動化:不可
検 体:血清
正確性試験:既知濃度の管理検体を試料として測定するとき、既知濃度の±20%の範囲内
同時再現性試験:同一検体を同時に10回測定するとき、変動係数は15%以下
測定範囲:5~250μg/L
参考基準値:健常人女性 (閉経前、30~44歳, n=81例) 平均値 32.0μg/L, 基準値 14.9~68.8μg/L
健常人男性(40~60歳、n=65例) 平均値 37.3μg/L, 基準値 19.5~71.2μg/L
【特徴】 骨はremodelingと呼ばれる破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成を周期的に繰り返し、また、骨―血液間でカルシウムの出し入れを行うなど新陳代謝が活発な組織で、骨基質にカルシウムやリンから成るハイドロキシアパタイトの結晶(骨塩)が沈着して形成されている。この骨基質の90%以上がⅠ型コラーゲンであり、骨芽細胞内でその前駆物質のⅠ型プロコラーゲンとして合成される。Ⅰ型コラーゲンは細胞外に分泌されてペプチダーゼの作用によりC末端およびN末端が切断された後、重合しコラーゲン線維が完成するが、このときN末端から切断され放出されるのがインタクトⅠ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(Intact aminoterminal propeptide of type Ⅰprocollagen:Intact PⅠNP)である。
骨代謝マーカーには、骨吸収マーカーと骨形成マーカーとがあり、Intact PⅠNPは骨形成マーカーに分類される。骨吸収マーカーにはコラーゲン代謝を測定する指標と酵素活性を測定する指標の両方が保険収載されているのに対して、骨形成マーカーでは酵素活性を測定する骨性アルカリフォスファターゼ(BAP)が収載されているだけであり、骨形成におけるコラーゲン代謝を測定するマーカーが求められている。Intact PⅠNPはBAPに比較して、骨芽細胞分化の最も初期から産生される物質であることから、骨形成をより早期から鋭敏に反映するとともに、プロコラーゲンとしての安定性が高いため検体保存安定性に優れ、一般臨床での測定に再現性よく安定したデータを示すという特長がある。また、Intact PⅠNPは、血清を検体とするため尿を検体とする骨代謝マーカーと比較してクレアチニン補正が不要であり、精度の高い補助診断が行えるという特長もある。
今回収載される「プロコラーゲンIntact PⅠNP」は、抗PⅠNP抗体に検体中のIntact PⅠNPと標識抗原とを同時に反応させて競合させ、生成した結合型と遊離型とをPⅠNP分離液中の第二抗体を用いて分離し、第二抗体に結合した結合型の放射能を測定して結合率を求める、競合阻害反応によるRIA法である。各標準液の結合率から標準曲線を作成し、この標準曲線を用いて検体中のIntact PⅠNP濃度を求める。
骨粗鬆症患者を用いて国内で行われた臨床性能試験において以下の結果が得られた。
1.ビスフォスフォネート投与群において、骨密度増加を予測する指標としての有用性評価では、治療開始12か月後の骨密度(Bone Mineral Density;BMD)の増加例に対して、Intact PⅠNPは薬剤投与開始3か月以降の陽性一致率でBAPを含む他の骨代謝マーカーに比較して良好な一致率が認められ、骨量増加の予測指標となりうるとともに、効果判定やモニタリングに有用であることが示された。
2.選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)投与群では、骨密度増加を予測する指標としての有用性評価で、治療開始12か月後のBMDの増加例に対して、Intact PⅠNPは薬剤投与開始3か月以降の陽性一致率で他マーカーに比較してⅠ型コラーゲン架橋C-テロペプチド(βクロスラプス;CTX)に次ぐ良好な陽性的中率が認められ、6か月以降はBAPを含む他の骨代謝マーカーに比較して同等以上の結果が得られ、骨量増加の予測指標となりうるとともに、効果判定やモニタリングに有用であることが示された。
3.コントロール群においては、骨密度増加を予測する指標としての有用性評価で、12か月後にBMDが増加しなかった例に対して、Intact PⅠNPは1か月以降からBAPを含む他の骨代謝マーカーに比較して、同等又は同等以上の陰性一致率が認められたことから、同等の特異性を有することが示された。
以上より代謝性骨疾患(主に骨粗鬆症)患者に対する現在の骨代謝(骨形成)状態の把握、骨代謝改善治療薬の選択、治療後の効果判定やモニタリングに有用であることが示された。
【保険請求上の注意】
ア インタクトⅠ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(Intact PⅠNP)はD008「14」の骨型アルカリホスファターゼに準じて算定する。
イ インタクトⅠ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(Intact PⅠNP)、「14」の骨型アルカリホスファターゼ(BAP)及び区分番号「D007」血液化学検査の「33」のアルカリホスファターゼ・アイソザイム(ポリアクリルアミドディスク電気泳動法)のうち2項目以上を併せて実施した場合、主たるもののみ算定する。
血清中抗 RNA ポリメラーゼIII抗体(準用区分先:D014「10」)(区分E-3:測定項目が新しい品目)
平成22年5月1日より適用 自己抗体検査
保険点数:170点
判 断 料:D026 5 免疫学的検査判断料144点(月1回に限る)
製 品 名:MESACUP anti-RNAポリメラーゼIIIテスト
検査目的:血清中の抗 RNA ポリメラーゼIII抗体の測定
製造販売元:(株)医学生物学研究所 TEL 03-5248-3067
測 定 法:酵素免疫測定法(ELISA) 定量検査
包装単位:96テスト/1キット(1回ですべて使用の場合、90検体。検量線作成用に二重測定で計4テストを使用する)
結果が出るまでの時間:約4時間 自動化:不可
検 体:血清
正確性試験:濃度の異なる管理検体2例を測定するとき、Index期待値の20%以内同時再現性試験:濃度の異なる管理検体3例を同時に8回測定するとき、変動係数は10%以下
測定範囲:Index値の5~150
カットオフ値: Index値 50
【特徴】 全身性強皮症は代表的な膠原病の一つであり、皮膚および諸臓器の線維化と末梢循環障害とを主徴とし、手指末梢から中枢側に進展する皮膚硬化を特徴とする。全身の皮膚のみならず、肺、腎、心、消化管などの内臓病変をきたし、長期間の闘病を余儀なくされることから、特定疾患(公費対象)に指定されている。全身性強皮症には、皮膚硬化範囲が広範で、発症後3~5年間は線維化病変が急速に進行するdiffuse型と、皮膚硬化範囲が手足に限局し、内臓病変が少ないlimited型の二つの病型に分類される。全身性強皮症患者の血清中には抗トポイソメラーゼⅠ(抗Scl-70)抗体や抗セントロメア抗体など生命活動に重要な役割をもつ核蛋白質に対する自己抗体が高頻度に検出され、これら自己抗体の検出は全身性強皮症の診断、病型分類や予後の予測に有用である。
本試薬はELISA法により血清中の抗 RNA ポリメラーゼIII抗体を測定するものである。抗原としてリコンビナントRNA ポリメラーゼIII用い、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgGポリクローナル抗体(ヤギ)による二次反応を経て、酵素基質溶液による発色から吸光度を測定して抗 RNA ポリメラーゼIII抗体のIndex値を算出する。
今回保険収載された血清中抗RNAポリメラーゼⅢ抗体の全身性強皮症における陽性率は全体で9.9%であり、そのうちdiffuse型では17.1%、limited型では2.8%であり、diffuse型で比較的高い陽性率を示した。また本抗体陽性者では、強皮症の重篤な合併症である強皮症腎を合併する頻度が高い(33%)ことが特徴としてあげられている。本抗体は、同じくdiffuse型の強皮症で検出される抗トポイソメラーゼⅠ(抗Scl-70)抗体および抗セントロメア抗体との共存例が少ないことから、これら2検査に本検査を併施することで強皮症における自己抗体検出率が59.9%から67.3%へと7.4%上昇したと報告されている。
【保険請求上の注意】
血清中抗 RNA ポリメラーゼIII抗体
ア 血清中抗 RNA ポリメラーゼIII抗体は、「10」の抗Scl-70抗体に準じて算定する。
イ びまん性型強皮症の確定診断を目的として行った場合には、1回を限度として算定できる。
ウ イの診断において陽性と認められた患者に関し、腎クリーゼのリスクが高い者については治療方針の決定を目的として行った場合に、腎クリーゼ発症後の者については病勢の指標として測定した場合に、それぞれ3月に1回を限度として算定できる。
ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)(区分先:D007「30」)(区分E-2:測定項目は新しくないが、測定方法が新しい品目)
平成22年5月1日より適用 血液化学検査
保険点数:150点
判 断 料:D026-3 生化学的検査(I)判断料144点(月1回に限る)
検査目的:血清又は血漿中のヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)の測定
【特徴】 ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(Heart type fatty acid-binding protein ;H-FABP)は、心筋細胞の細胞質に多量に存在する分子量約15kDaの低分子可溶蛋白で、心臓において遊離脂肪酸の細胞内輸送をつかさどり、心筋細胞へのエネルギー供給に重要な働きを担っている。心筋虚血による心筋細胞の障害時に速やかに血中や尿中へ逸脱し、血中H-FABP 値が6時間以内に上昇する。H-FABPは急性心筋梗塞(AMI)の早期診断マーカーとして有用であり、すでに保険収載されている。
今回保険収載される測定用試薬は、ラテックス免疫比濁法(製品名:FTラテックス H-FABP)、あるいはラテックス免疫比濁法(製品名:リブリア H-FABP)により血清又は血漿中のH-FABPを測定するものである。すでに収載されている免疫クロマト法および酵素免疫測定法(ELISA法)とは、前者とは定量検査であること、後者とは汎用自動化機器を用いて短時間で測定できる点で異なる。FTラテックス H-FABPは試料中のH-FABPとラテックス粒子に感作した抗ヒトH-FABP抗体との抗原抗体反応により生じた凝集を濁度変化として、リブリアH-FABPは同様の操作により生じた凝集を吸光度の増加としてとらえてH-FABP濃度を求めるものである。いずれも規収載試薬とは、良好な相関が得られている。
1. FTラテックス H-FABP
製造販売元:バイオリンクス(株) TEL 045-943-3201
測 定 法:ラテックス免疫比濁(LTIA)法 定量検査
包装単位:100、200、400テスト/1キット(検量線作成用に6テストを用いる)
結果が出るまでの時間:10分 自動化:可(汎用自動分析装置)
検 体:血清、血漿
参考基準範囲:5ng/mL未満
正確性試験:既知濃度(8~40ng/dL)試料を測定するとき、表示濃度の±15%以内
同時再現性試験:変動係数10%以下(既知濃度8~40ng/dLの試料を測定するとき)
測定範囲:2.5~160ng/mL
相 関 性:免疫クロマト法に対し、r=0.964 y=0.983x+0.788、
酵素免疫測定法に対し、r=0.995 y=0.988x-1.468
なお、AMIが疑われる疾患群におけるH-FABP検査のミオグロビン、CK-MBを対照とした本試薬における検討では、免疫クロマト法とは有病正診率および診断効率で優れており、酵素免疫測定法とは有病正診率、無病正診率および診断効率でいずれもやや上回る成績であった。また、診断正確度でも優れていた。
製 品 名:
2. リブリア H-FABP
製造販売元:DSファ-マバイオメディカル(株) TEL 06-6337-5940
測 定 法:ラテックス凝集(LA)法 定量検査
包装単位:100テスト/1キット(検量線作成用に二重測定で計12テストを使用する)
結果が出るまでの時間:15分 自動化:可(汎用自動分析装置)
検 体:血清、血漿
参考基準範囲:5ng/mL未満
正確性試験:既知濃度(50~200ng/dL)試料を測定するとき、表示濃度の±10%以内
同時再現性試験:変動係数10%以下(既知濃度50~200ng/dLの試料を測定するとき)
測定範囲:2~120ng/mL
相 関 性:酵素免疫測定法に対し、r=0.994 y=0.967x-0.647
なお、本試薬における検討では、正確性、同時再現性は酵素免疫法と同等であり、その測定範囲上限値ならびに下限値の設定は妥当であるとしている。
【保険請求上の注意】(『』内が変更点)
「30」のヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)はELISA法、免疫クロマト法、『ラテックス免疫比濁法又はラテックス凝集法』により、急性心筋梗塞の診断を目的に用いた場合のみ算定する。ただし、ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)と「30」のミオグロビンを併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
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